
まちのメモリー

着物と和み【桔梗屋】
★閉店されました

多くのファンを持つ千林商店街屈指の老舗、
呉服店『桔梗屋』が惜しまれつつ閉店する。

現店主は〝和〟という言葉がしっくりくる山口昭雄さん。
長年連れ添い共に働く奥さんのミヤさんとは阿吽の呼吸だ。
創業者は昭雄さんのお母さん 清子さん。
明治時代、実家のおじいさんが絹の製糸会社を営んでいたこともあり、
清子さん自身も絹への愛着が強く、娘時代はデパートの着物売り場へ出入りしては目を輝かせていたそう。
そんな清子さんに付いた愛称は〝デパート娘〟。
夢は〝デパートに負けない呉服店〟を開く事だった。
桔梗屋が開業したのは 終戦から3年後の昭和23年(約70年前)。
まだまだ生活に余裕の少ない世情だったが、良質な品揃えで注目を集めた。
昭雄さんが家業に勤しみ初めたのは、高校卒業後。
「最初は母の側でひたすらじっと座っているだけの毎日でした。」
商売の楽しさに気がついたのは、年上の番頭さんと一緒に外商に回っていた頃。
「誠意を持ってお客さん本意のものを勧める。本当に気に入って頂けた時、お客さんはやっと自分を信頼してくださいます。身の上相談までしてくださったり(笑)呉服屋冥利に尽きる瞬間です。」

桔梗屋の魅力は、昭雄さんの真面目な人柄にもある。
「地道に真っ直ぐ。それしか出来ない性格なんです。」
昭雄さんからお話を伺う中で感銘を受けた言葉が二つある。
一つ目は〝漁夫の生涯 竿一筋〟
漁師が生計を立てるには竿一本あればいい。という意味だそう。
「何ごとにも基礎があります。基礎を忘れずに自分が進む道を信じて極めてください。」
昭雄さんは〝信頼一筋〟だという。胸に沁みる言葉だった。
二つ目は〝水は方円の器に従う〟
水は器に合わせて形を変える。という意味。
「頑固にならず、柔軟な人であってください。」
難しい商売や人間関係も、この言葉をがあれば悩まずポジティブに考えらる。
洋服中心の今、呉服商売は厳しさを増している。
着物は洋服に比べて着るのが楽ではないし、安くもない。
反面、着物は 特別感 や 贅沢感 を味わえる。
そう感じるのは、心の中に〝和み〟を求めているからだと思う。
日本人がお茶や畳の部屋で和みを感じるように〝着物と和み〟も切っても切れないものだろう。

(昭雄さんから帯の締め方を教わりました。)
正直、僕は着物を一着も持っていない。
昭雄さんとお話するまで〝和の心〟という(よく聞く)言葉の意味を知ろうともしなかった。
でも今は少しだけ理解できた気がする。
桔梗屋は閉店する。
それでも昭雄さんから学んだ和の心を忘れないでいたい。
文:さかもっちゃん
写真:とっしー


桔梗屋では
12月末まで〝大感謝 閉店セール〟が開催中!
着物や小物が20%から、最大90%オフ
「御得意様も、初めての方でもお気軽にお越し下さい」とのこと。
【桔梗屋】
住所:大阪府大阪市旭区千林1-10-11
電話:06-6951-5609
営業時間:10:00〜18:00
定休日:火曜日